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SiC基板上ツイスト2層グラフェンの作製と電子状態

乗松 航 氏
Wataru Norimatsu
名古屋大学 工学研究科

2022年12月16日(金) 10:30~ 理学館506

ツイスト2層グラフェンとは、2層のグラフェンを、回転させて積層させたものである。ツイスト角によって電子状態を制御可能であることから、2000年代後半から盛んに研究が行われている[1]。中でも魔法角と呼ばれる1.1度ツイスト2層グラフェンにおいて超伝導の発現が2018年に報告され、再び注目を集めた[2]。超伝導の起源は、フェルミエネルギー付近にフラットバンドと呼ばれる平坦なバンドが出現し、状態密度が大きくなることと関係しているとされる。フラットバンドの観察を含むツイスト2層グラフェンの実験研究は、主にグラファイト単結晶を剥離することによって得られた数マイクロメートルの試料を用いて行われてきた。一方で我々は、SiC熱分解法によるウェハースケールの単一方位グラフェン成長とその表面界面構造解析・構造制御を行ってきた[3]。この技術を利用して、ミリメートルスケールの魔法角ツイスト2層グラフェンの作製に成功した。本講演では、ツイスト2層グラフェンを含むグラフェン成長技術の詳細と、フラットバンドを含む電子状態観察の結果について紹介する[4]。特に、フラットバンドの電子ドープと基板との関係、非対称ドープ、起源の不明なバンドについて議論したい。

[1] J. M. B. Lopes dos Santos, et al., Phys. Rev. Lett. 99, 256802 (2007).
[2] Y. Cao, et al., Nature 556, 43 (2018).
[3] 例えば解説論文 M. Kusunoki, et al., J. Phys. Soc. Jpn. 84, 121014 (2015).
[4] K. Sato, et al., Commun. Mater. 2, 117 (2021).

*本コロキウムは、第35回QLCセミナーを兼ねてます。