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強相関電子系の理論

重い電子系を貫く法則を解明

Ce系、U系、Yb系重い電子系(N=2~8)に対して、
拡張されたKW則が普遍的に成立する。

 f電子金属化合物では、極めて強い電子相関によって電子の有効質量が裸の電子の百倍から数千倍に達する。これら重い電子系では、比熱係数γと電気抵抗のT2の係数Aの比A/γ2は門脇・Woods(KW)比と呼ばれ、ほぼユニバーサルな値a0=1×10-5μΩcm(K mod/mJ)2をとると長年考えられてきた。ところが最近、Yb系重い電子系を中心に、多くの化合物でKW則が著しく破れることがわかってきた。この実験事実は、重い電子系の基底状態―フェルミ液体か、未知の非フェルミ液体か―に関する本質的な問いかけであった。

 ところでYb系重い電子系では、近藤温度が結晶場分裂より大きく、Yb3+の全角運動量J=7/2の縮重度N=2J+1=8が基底状態に残る場合が多々ある。そこで我々はフェルミ液体論に基づき、一般の縮重度Nにおける「拡張されたKW則A/γ2 = 2a0/N(N-1)」を導出した[26]。この式でN=2とおくと従来のKW比a0を再現する。図にN=2?8の物質のKW比の一覧を示す。物質開発によりN>2の化合物が数多く合成された現在、「拡張されたKW則」が重い電子系を貫く普遍的関係式である[1,2]。 

[1] H. Kontani, J. Phys. Soc. Jpn. 73, 515 (2004). (Editor’s choice)
[2] N. Tsujii, H. Kontani and K. Yoshimura, Phys. Rev. Lett. 94, 057201 (2005).